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    株式会社厚徳社

    エキスパート・ローダーで工程のムダを防ぐ

    印刷新報 2021年5月27日掲載

    四六全判2色刷両面機を武器に徹底した品質管理体制を構築し、顧客の多彩な要望に応える厚徳社(鈴木理明社長、本社/東京都新宿区)は生産工程の効率化を図るべく2018年に日本アグフア・ゲバルト(岡本勝弘社長)の現像レスプレート「AZURA(アズーラ)」を導入した。そして今年2月には1200枚積みのパレットからプレートを直接装填可能なパレットローディングシステム「Expert Loder(エキスパート・ローダー)」を採用し、プリプレス工程のさらなる効率化を実現している。

    自動化、省人化への取組みがクローズアップされている現在、生産現場の改善を進めることで企業の体質強化を図る同社の戦略、また今後の展開について鈴木社長に聞いた。

    書籍印刷を中心に一貫生産体制で対応

    厚徳社は1929年に創業し今年で92年目。当初から出版社をメインに事業を展開しており、現在のクライアントも出版関連会社が多くを占めている。昨今では同業他社からの仕事も積極的に引き受けている。鈴木社長は「お客様に合わせて設備投資を行ってきた。プリプレスからポストプレスまで書籍印刷の工程を自社内ですべてこなすことができる。また、印刷現場は24時間稼働。フレックス制度を導入することで昼夜問わず柔軟に顧客対応ができる体制にしている」と強みを語る。

    生産拠点である川越印刷工場(埼玉県川越市)には四六全判2色刷両面機を主力に、菊全判反転機構付4色機などの枚葉オフセット印刷機、無線綴じラインをはじめとする製本加工設備、本社にはオンデマンド印刷機も設備している。特に同社は品質検査を重視しており、四六全判2色刷両面機にインライン品質管理装置を搭載している他、オフラインの枚葉印刷検査機も導入している。「四六全判の2×2の印刷機は当社の特長となっており、ホームページを見て問い合わせをいただくケースが多い。検査装置は、微細なゴミがひとつ付着しただけで不良と判断されるような高い品質レベルが求められるため充実させてきた。不良品は絶対に社外に出さないという体制は構築できている」と厳しいチェック体制に自信をみせる。

    厚徳社はまた生産管理も強化している。「印刷会社の共通の課題は生産工程にムダが多いこと。仕事の段取りをしっかりと組んでいても急な組み替えが発生してしまう。この工程管理に関するムダを省くため印刷工程管理ソフトウェアを採用し、生産の見える化に取り組んでいる。システムのおかげで段取りの組み替えも迅速にできつつある」と鈴木社長は説明する。稼働状況以外にもさまざまなデータがフィードバックされるため、今後はアグフアとも協力しながらデータの有効活用を検討していくという。

    現像レス、速乾印刷で現場改革、A-SAPで経験と勘から脱却

    鈴木社長は以前から速乾印刷と現像レスに興味を抱いていたが、「なかなかアグフアとの接点がなかった」と話す。現像レスは現像工程が不要となることで網点が安定すること、そして自動現像機のメンテナンス作業の手間や時間というムダを省くという目的を達成するために必要なキーワードであった。このため厚徳社ではパウダーレスインキを用いて水を極限まで絞った独自の印刷方式『クイッカードライプリント(Quicker Dry Print)』を展開したり、機上現像タイプのプレートもテストしたりするなど、速乾印刷と現像レスの実現を目指したが、機上現像タイプについては発生した課題が解決に至らず、残念ながら断念した。

    そのような中、2018年に親しい協力会社からアグフア社を紹介された。最初はあまり気乗りしなかったという鈴木社長だったが「アズーラの説明を受け、今が変えるべきタイミングだと捉えた。テストでは湿し水との相性に起因したプレートの汚れや耐刷性など一部、改善点はあったが、ほとんど欠点は見られなかった。視認性も落ちることなく、印刷オペレータからは狙いどおり網点がきれいという評価が多く聞かれた。これで採用できると確信した」とアズーラとの出会いを振り返る。

    アズーラを導入するにあたり、厚徳社はアグフア社のA‐SAP(Agfa System And Printing)プログラムの取組みも開始した。A‐SAPは印刷工場内のムダを抽出して削ぎ、効率化された工場・ワークフローにすることで利益を創出し印刷会社の経営改革へ導くプログラム。IT・システムコンサルティングと印刷コンサルティングの2本の柱で構築され、多くのアグフアユーザーが成長への足掛かりとして実践してきている。

    鈴木社長は「印刷機のオペレータごとに使用する資材が異なり、機械のセッティングも統一されていない状況だった。職人の世界でもあったため経験と勘の世界で仕事をしてきた世代も多い。A‐SAPで技術指導を受けることで印刷の標準化に向けた数値的かつ理論的な裏付けを教えてもらうことができた。アズーラの効果を最大限に発揮するためにも必要なプログラムだと痛感した」と高く評価している。A‐SAPプログラムは通常1年という期間で行われるが、厚徳社ではオペレータの技術を高めて現場力を向上させるため、今も継続して指導を受けている。目指すはアグフア社の速乾印刷技法によるパウダーレスの追求である。

    単純作業は機械に任せる

    ムダの省略を重視している鈴木社長は「人でなくてもできる作業は機械やソフトに任せるべき」という考えをもつ。今年2月に導入したエキスパート・ローダーはまさにその考えに基 づいたものである。
    「プレートの補充に関して当社のような四六全判ともなると梱包が木枠で重く、通常よりも重労働となるため、梱包材の扱いを含め常時2名で作業にあたっていた。開梱や装填という単純作業でありながら大きな負荷がかかる。開梱後の廃棄物も悩みの種だった。エキスパート・ローダーを見た際、刷版の環境を変えて自動化を進め、省資源化へもつながると判断した」と鈴木社長は採用の背景を述べる。

    鈴木社長

    導入後には、刷版のオペレータは1名で作業をこなしている。厚徳社では四六全判と菊全判のプレートを使用するため、パレットの入れ替えが不可欠であり、導入以前はパレットの位置決めなど手間がかかることが予想された。ところが実際に運用が始まると実にスムーズで現場でも作業性が格段に向上したと好評。出力指示なども短時間のオペレータ養成で扱えるようになるため「慣れれば誰でも作業できる」と多能工化にも貢献できている。

    さらに、意識改革を行うことでより効率的な働き方ができるようになると鈴木社長は見込んでいる。「業界で長く仕事をしていると、出力後のプレートをしっかりと目視で確認することが習慣になってしまう。しかし、プレートは基本的に問題がないという前提で次工程へ進め、万一問題があったという場合は再出力するという発想に切り換えた。そうすれば常に人が刷版室にいる必要はなくなり、別の仕事をこなしてもらうことができる。機械で済むことは機械に任せるという流れのなかの考え方のひとつ」と説く。

    機械、ソフトウェアの活用という取組みに関してはJDFベースプリプレスワークフローの「Apogee Prepress(アポジー・プリプレス)」により、リモートでプレート出力ができる仕組みを構築するという構想もある。「刷版オペレータが不在時にプレートの再出力が必要となるような緊急時や、現在のような環境を考慮すると働く場所を選ばずに遠隔操作できる方が素早く対応できる」という狙いである。

    高精細印刷への挑戦で新たな軸を

    厚徳社ではまた、XMスクリーニング「Sublima(スブリマ)」による高精細印刷を新たな挑戦に掲げている。
    「高精細印刷はハードルが高いと思い、今まで取り組まずにいたが、アグフアのサポートがあるスブリマであれば実現できると期待した。当社の強みがひとつ増え、新市場の開拓にもつながると思っている。まずは240線を目指す」と鈴木社長は意気込む。

    この高精細印刷の実現に不可欠なのは現場の技術力。「アズーラやエキスパート・ローダーの導入により新しい刺激を受けたオペレータは、自身のスキルアップを意識するようになった」と効率化だけに留まらない波及効果が挑戦を後押ししたかたちだ。

    現場力向上にはもちろんアグフア社のサポートも欠かせない。鈴木社長は「アグフアの営業担当はこまめに来訪してくれて、常に新しい情報が出てくる。当社から投げた課題にもしっかりと答えてくれている。投げたボールが大きくなって返ってきた時など驚くほど。今まで担当してくれた営業マン、A‐SAPの技術の方々も素晴らしく、何か問題が起きた際にオペレータが連絡しやすいという関係性が築けているため、安心して仕事ができている」と全幅の信頼を寄せている。

    高精細印刷実現の先には「まだ具現化していないが面白いアイテムをつくっていきたいという理想はある」と鈴木社長。その裏には営業マンをバックアップするという思いがある。「コロナ禍でリモートが増え、対面での営業が減少している。モニター越しではお客様の潜在的なニーズを読み取ることが難しい。高精細を生かし、実際に見ていただけるアイテムをつくることで、お客様との接点づくりができる」と話す。厚徳社が目指す印刷は、顧客としっかり対話し、要望を最大限に満たすオーダーメイド。デジタルだけに偏らないリアルな交流こそが、より良い印刷物を提供することにつながる。

    同社では高精細印刷を今後の軸とする方向を打ちだしている一方、「RIPを含めたプリプレス環境を改革していきたい。ワークフローシステムにより省くことができる工程があると考えている。加えて、省力化や省人化につながるA‐SAPを活用しながらOEE(設備総合効率)を高めていくことが必要である」と引き続き省力化・省人化に着手していく構えでもある。
    アズーラ、エキスパート・ローダーと革新的技術を取り込むことで成長している厚徳社。今後も自社の強みを増やしながら顧客の思いをカタチにし続ける。

    生産性向上を実現するエキスパート・ローダー

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